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中国さん、やさしくしてね [本]

引越し業者が、下見にやってきた。どれくらいのものを運ぶかをチェックして見積もりを出すためだ。一部屋一部屋案内して、これは持っていく、これは廃棄するなど説明していく。業者が来る前に一応検討はした。問題になったのは2つのソファ-セットである。1つは、もう20年ほど前に日本で買った日本の団地サイズのソファ-・セット。さすがにこれは、廃棄と言うことで素早く一致を見た。実際あまり使っていない。もう一つは、9年前にタイを出るときに買った白いレザ-のかなり大振りのソファ-。一人掛けのソファ-は今でもとてもすわり心地がよいのだが、3人掛けのソファ-のスプリングがちょっと弱くなっている。これも思い切って廃棄ということになった。引越し業者のおばさんがやってきて、書類を見せるためにそのソファ-に座ったとき、思ったより深く沈みこんで足が浮き上がって、「うわぁ~」と叫んだ。そんなに叫ぶほど傷んでいたのか? 廃棄で正解。

一応のチェックが終わり、いろいろと説明を受けた。TVは中国の電波システムに対応するかどうかわからないので、チェックするとのこと。後ほど、これは中国では映らないと知らされ廃棄が確定する。会社のスタッフがもらってくれるようだ。酒類の持ち込みは可能だが、いろんな問題を引き起こす引き金になるので、引越し業者としてはお勧めできないという「進言」を受けた。「え、お酒が持っていけない? 私のワインコレクション、日本酒ストックがダメ?」、思わず私の目が潤む。実際、2~3本を除けば船賃をかけてもっていくようなものでもないのだからいいのだけれど、精神的に大きな痛手となった。「中国では、本の持込にも制限があるようです。事務所でチェックして後で知らせます。今見たところ、ざっと1,500冊ほどあるようですけど、ひょっとしたら...」。いや~な感じである。「え、だめなんですか。私の本はアホな小説ばかりで、政治的な本なんて一冊もありませんよ。なんとかしてくださいお代官様」。「私は代官でも中国政府高官でもないので、どうもできません、調べて連絡します」。にべもない。

後日メ-ルが来た。「400冊から600冊まで...」。私の読書人生に楔が打ち込まれた瞬間だった。あの本たちと別れなければならない? 喜びも悲しみも分かち合ってきた、親友のようなあの本たちと? 人生を学び思いやりを教えられた、家族のような本たちと? 「お代官さま~...」。しかし、よく考えれば、読み返す本はせいぜい20冊ほどである。あとの本は、引越しのたびに場所を決められると、次の引越しまでそこを動かない。持ち歩く意味はほとんどない。しかも99%が文庫本だ。昨年末、NHKで「坂の上の雲」の第3部最終章をやっていた。まだ原作を読んだことがないという妻に、本棚の司馬遼太郎のコ-ナ-から、これを読むべしと全8巻を渡すと、紙が黄ばんで、字が小さくて読みにくいと苦情を言われた。そうなのだ。いつの間にやら本たちは風雪を経て読みにくくなってしまったのだ。悲しいが事実である。次に自分で読むときは、買いなおすか、日本の図書館から借りると言うのが良さそうだ...と、5分ほど頭の中で検証をすると、まだ読んでない本を含め300冊ほどを持っていけばいいと思うようになった。問題は、いかに残りの本を処遇するかと言うことである。ネットで調べると、「Book-Off」がソウルにもあり、引き取りもしてくれるようだ。電話をして聞いてみると、「50冊以上なら、引き取りに伺います」とのうれしい返事。「50冊と言わず1,000冊くらい持っていってください」、「で、どのような本なんでしょう?」、「9割以上文庫本です」。ここで、電話の向うの声が弱くなった...「文庫本ですか...ちょっと時間が掛かりますので、相談して一週間後くらいにまた電話します」。古文庫本には市場価値がないか、あっても利益が薄いのであろう。はたして「Book-off」から、電話はあるのであろうか。
で、Book-Offから電話があり、3月31日に来てもらえることになった。それに備えて、早速仕分け作業に入る。一冊づつ検討していたら時間がいくらあっても足りないので、作家で仕分けをした。読み返しそうにないけど、そばにいて欲しい作家、読み返すかもしれないけどその時はまた買えばいいやと思う作家...考えても論理的結論は出ないので、「感覚」に任せてさよならすべき本たちをダンボ-ル箱に入れていく。あっという間に5箱出来てしまった。そんな作業をしていると、あると思っていた本がないことにも気がついた。息子に持っていかれたり、スイスを出るときに寄付したりしたのを忘れていたのだ。本棚がすっきりし、気分もすっきりした。

後日、Book-Offが本を引き取りに来てくれ、「503冊、約8000円です」との連絡を受けた。もっと出さなければいけなかったのに、中国の通関が通るかどうか心配である。


そしてここ数日、韓国サイドの引継ぎが始まり、送別会が始まったりして、かなり慌しくなってきた。時間も大きく制限されているので、思い切ってソウルからの発信はこれを最後にしたいと思う。 

皆様にはお付き合いいただき、コメントをいただき、ほんとうにありがとうございました。上海で落ち着いたらまた始めるかと思いますが、それまでしばらく失礼いたします。2012年の桜の季節がそこまで来ているようです。皆様が明るく暖かい春をお迎えになるよう心から祈ってします。


2012年4月吉日 雀翁拝

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beluga

国外から国外への転勤たいへんですね。今度は上海ですか。ダイナミックな中国経済の真っただ中にいかれるんですね。自分は、ケニアからアフガニスタンへと転勤しましたが、ブログは1年9か月も休んでしまいました。
by beluga (2012-04-02 18:36) 

makizukin

いよいよソウルとのお別れの日が近づいていますね。
しばらくバタバタの日が続くと思いますが、どうぞお気をつけて。
落ち着いて、今度は「上海からの場当たり的ノート」とタイトルが変わってからの記事でお会いすることになるのかな?
再開の日を楽しみに待っています。
by makizukin (2012-04-02 22:52) 

ももんが

中国って、大変ですよね。友人も中国への引っ越しが決まって、制限が多くて本当に大変だと嘆いていました。

雀翁さんのブログの再開、心から楽しみにしております。
お忙しいでしょうが、お体に気をつけてお過ごしください。
by ももんが (2012-04-03 08:22) 

krause

雀翁さん、韓国でのお仕事、お疲れ様でした。

雀翁さんのブログは、雀翁さんのスイス滞在中からを拝読していました。これから引き続き雀翁さんの上海ブログを楽しみにしています。スイスのローザンヌからジュネーブエリアは、精密機械関連の会社に勤務していたときに、年に何度も出張していたので、その思い出と一緒に楽しく読ませていただいていました。また、韓国は個人的に好きな国であることと、現在の仕事での担当エリアなので、どこかで雀翁さんと袖触れ合っているのではないか、と考えながら、ソウルの街中を千鳥足で歩いていました。上海は、今のところ、私には縁の無い街なのですが、アジアでは最も美しい街だと思っていますので、ブログでのご報告を楽しみにしています。

さて、雀翁さんの上海転勤と同じ頃、私の出稼ぎ仕事の組織も大きく変更し、新組織での船出をすることになりました。売り上げを伸ばし、人を増やし、そのためには取り扱い品目を増やしていくことになり、1割の小さな楽しみと期待、そして9割の不安を抱えながら日々を過ごしています。

それでは、ブログでの上海での楽しいお話を心待ちにしております。
by krause (2012-04-03 14:58) 

collet

おお~いよいよなんですね!
それにしても、国境を越えての引越しは大変ですね!!
まあ、一般のでも大変だけど~(^^ゞ
そして、新しい住まいでの片付けも大変ですね。
どうぞ、疲れを出さぬよう、気を付けて下さいね!

ところで、黄金をバックに佇んでいたサワディカ-人形は、
勿論、上海の玄関でも、毎晩ご主人をお迎えするのかしら?
by collet (2012-04-04 16:17) 

mint_tea

本を捨てるのは抵抗がありますよね。置き場所のない我が家は図書館様様ですが、それでもいつのまにか増えるので時々BOOKOFFのお世話になります。先日中国に赴任するダンナ様に付いていくという友人の送別会がありました。現地の学校のリサーチなど色々大変そうですが、前向きに走り回っているようです。けれど本の持ち込み制限があるとは知りませんでした。インターネットの検索とかも気になっちゃいます。落ち着くまでは大変だと思いますが、上海通信も楽しみにしています。
by mint_tea (2012-04-07 19:32) 

葵ママ

お久しぶりです。
今度は上海ですかぁ。日本国内限定で引っ越しを繰り返してきた私からすると、その規模の大きさにはびっくりです。

それにしても、本の持ち込み制限があるとは!歴史関連の本が多い、しかも相当マニアック(北朝鮮絡みとか)な私の可愛い蔵書たちは内容からして検閲されそうで怖い。そりゃまあ、あれだけあるとそうそう繰り返し手に取るものでもないですが、「処分しろ」とか迫られたらバリケードの奥に立てこもりそう・・・

今頃、まだまだ慌ただしい日々でしょうね。体調を崩さないようお気をつけて・・・
by 葵ママ (2012-04-16 07:42) 

mee

普通にお引越しって大変なのに、異国から異国ですから本当にご苦労様です。上海はパパのお爺ちゃんの出身地です。行ったことはないです。
落ち着くまでに時間がいると思いますが、とりあえずは食べ物があうかどうか、落ち着いて寝られるかどうか、環境がよろしいことを願います。
時間が出来ましたら、ブログを覗いてくださいね。

先日、ソンクラーン(水掛祭り)でした。暑い一日でしたよ、、

by mee (2012-04-16 15:05) 

Bonheur

新天地での生活、素晴らしい物になりますように。
雀翁さんが中国へ赴任されると聞いて、頭をかすめたのが「中国でブログって書けるのか?」ということです。情報統制がスゴいと聞いていましたので。
上海のグルメに興味がありますので、美味しいお店のお話を楽しみにしています。
by Bonheur (2012-04-17 19:49) 

雀翁

皆様、

大変ご無沙汰しております。
皆様のところへお邪魔することはおろか、いただいたコメントにさえちゃんと返事ができず大変申し訳なく思っています。4月14日にこちらに着き、あわただしく時間だけが過ぎています。家探しもしましたが、ちょっと思惑とは違うようなところへ住みそうな気配で、こちらに送った荷物もまた、その一部は受け取ってすぐに廃棄というようなことになるかもしれません(個人的都合)。ネット接続(特にこのブログ)もスム-ズではなく、今後の継続も危惧しています。しばらくは、ドタバタが続きそうです。

by 雀翁 (2012-04-23 19:31) 

Michikusa

落ち着かれましたら、是非また更新してくださいね。
ずっと山口県を出たことがないので、海外からの情報を、ずっと楽しく拝見させていただいてまいりました。
最近は、スマホからの更新も可能ですしね。^^v
お忙しいとは思いますが、無理をされませんように。
by Michikusa (2012-05-09 00:24) 

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