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カナディアン・ロッキ-を歩く (その1) バンフへの遠い道のり [旅行]



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スイスを出て1年ほど経った頃から、また「山へ行きたい」、「山に会いたい」、「山を歩きたい」という想いがむくむくと湧き出し、押さえ切れないようになってきた。どこから受けた啓示なのか、行き先は「ロッキ-」、それも「カナディアン・ロッキ-」ということが心の中で鮮明になっていた。ある本によると、カナディアン・ロッキ-にはスイスが50あると言う。もちろんそれは比喩で、それだけの美しい山々があり、自然が残されているということだろう。去年行くことを考えたが、バンク-バ-のオリンピックがあり、カナダ熱が高まっていると困る(物価が高いとか、観光客が多いとか)ので、日本の信州で「山」の感触を掴むに留めた。そして、いよいよ2011年、想いを果たす時がきた。

私が「山を歩く」というのは、文字通り「歩く」のであって、「登る」のでなければ「走る」のでもない。私は、ひ弱な「ハイカ-」であって、鍛えられた「クライマ-」ではないのだ。1日あたりに登る標高差は500m以内と決めている。六甲山の半分くらいである。スイスにいる頃、張り切って700mほどを一気に登って痛い目にあった事がある。富士山登頂にも失敗した哀しい経験もある。頂上を目指し、岩を登るような登山は絶対にできない。易しいトレイルを歩いて、山や森やせせらぎの空気を感じ、鳥の声を聞き、花や景色を見ていい気持ちになりたいだけなのである。それなら、わざわざ太平洋を渡ってカナダまで行かなくてもよさそうなものだが、そういう山がどこにでもあるわけではない...いや多分、どこにでもあるのだろうが、その楽しみをわかりやすい形で感じられる所として、カナディアン・ロッキ-が想い浮かんだということだろう。

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今回の私たちの旅は、ヤムナスカ(Yamnuska)の方々の助けなしには、これほどの充実感を持って終えることはできなかったと思う。ヤムナスカは、カナダのロッキ-とユ-コンでの山岳ガイドを専門とする会社である。ネットで見つけたヤムナスカとのメールのやり取りでロッキ-の手応えを感じ、実際ガイドをしてもらって、ロッキ-での時間を3倍意義あるものにしてもらったように感じる。興味のある方は是非ヤムナスカのサイト(http://www.yamcanada.com/)を見ていただきたい。そしてもし、どこからか風が吹いて、カナディアン・ロッキ-に行こうと思われたら、中身のあるハイキングをしたいと思われたら、ヤムナスカはきっと力強い協力者になってくれると思う(ヤムナスカから何かをもらっているわけでない)。けっして安くはないけれど、彼らは、プロのガイドをしてくれる。プロは、無理を強いて険しい頂上へ連れて行ってくれるのではなく、山での滞在を安全で納得できるものにしてくれるエキスパ-トなのだ。

そんなヤムナスカとのやり取りで、準備するものとして、フリ-ス(または薄手のダウン)、ニットの帽子、手袋(いずれも防寒用)、そして、ゴアテックスなどの雨具(上下)、ヘッド・ランプなどが必要とされた。私たちは、夏山のお手軽な日帰りハイキングに行くつもりなのであって、マッキンレ-の登山に行くわけではない。それなのに、こんな装備がいるのだろうかと疑問に思った。スイスで標高2,000mのトレイルを歩くときは、いつも短パンにT-シャツだった(予備に長袖を1枚持って行ったがほとんど着たことはない)。間違っても、夏にフリ-スを着ることなどなかった。地図を見ると確かに緯度は高い。カナディアンロッキ-の南の玄関口、バンフは、カムチャッカ半島の南端、樺太の真ん中あたりで、稚内と同じくらいのスイスより高いが、それでも、ヨーロッパではロンドンの緯度あたりである。しかし、結局、私も従順な日本人である。5月と7月に冠婚葬祭で日本に帰ることがあったので、準備の買い物をした。これを機にトレッキングシュ-ズを新調したりしたので、けっこうな投資のになった。

インタ-ネットで航空券を取り、ホテルを押さえた。便利な世の中である。山の中で動けなくなっては困るので、週末にはできるだけソウル近郊の山を歩くようにした。雨具を着て雨に日の公園を歩いたりもした。これら約3ヶ月の準備期間、7月16日の出発に向かって気分は盛り上がる。


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約10時間のフライトを経てAC64便(Air Canada)は、バンク-バ-に到着した。午後4時に離陸したのに、時差のマジックで、着陸は同日の午前11時前。なんだか得したような気もするが、帰りにはその分を返さなければならない。入国審査を経て、荷物を受け取る。受け取って50mほど行った所に国内便用の荷物受付口がある。チケットはバンク-バ-経由でカルガリ-まで持っているし、荷物のタグもそうなっている。なのになぜか、一旦荷物を受け取って50mほど運ばなければならない。不思議だ。ちなみに帰りは、バンク-バ-で荷物は自動的に国内便から国際便に転送されていた。午後一時のバンク-バ-発カルガリ-行きの便を待つ。カルガリ-は冬季オリンピックもあった、カナディアン・ロッキ-の玄関口である。搭乗が始まるかと思ったとき、アナウンスがあり、「機体はあるんだけど、運行ができないの。だから午後一時の便はキャンセルしちゃう。でも安心してね、みんな午後4時の便に乗れるから...」というようなことを言った。「安心してね」と言われて安心する人はいない。約1時間後、出発ゲートのカウンタ-で4時の便のチケットをもらって、ようやく少し安心する。問題は、カルガリ-からバンフまでどうやって行くかだった。その日の宿はバンフに取ってあるし、その翌日朝9時にヤムナスカの人とホテルのロビ-で会うことになっている。カルバリ-の空港からバンフまではバスで約2時間かかる。関空のように15分おきにバスが出ているわけではなく、1時間半に一本程度という超ローカル路線並の運行頻度である。しかも最終便が午後6時半ごろと、やたら早い。予約していたバスに乗れないのは明らかだったので、バス会社に電話したが、うまく繋がらない。そこで、バスの予約とは関係ないのだが、ヤムナスカのフリ-ダイヤルに電話すると繋がった。事情を説明すると、バス会社に連絡してくれて、最終便に名前を入れてくれた。残念ながら午後4時の便は出発が遅れ、カルガリ-でもなかなか荷物が出ずに、結局、バス会社のカウンタ-の前に立ったのは。その日の最終便が出てからすでに40分ほど後だった。空港タクシ-をチャ-タ-するしかなく、25,000円ほどかかった。思わぬ出費だ。そして、バンフのホテルに着いたのは午後10時前である。ソウルのアパ-トを出たのが午後1時前だから、ドア2ドアで、ちょうど24時間ほどかかった計算になる。午後10時と言っても緯度が高いので、外はまだ明るい。15時間の時差もあって、身体的に何時であるかうまく把握できない。眠いような眠くないような...ぶらっとメインの通りに出てみると、解放的で明るい街並みにたくさんの人が出ていた。バンフの街には高いビルが1つもない、せいぜい3階建てである。遠くにカスケ-ド山とランドル山を望み、翌日からのハイキング漬けの日に胸が躍る。

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collet

いやぁ~ん、旅の序章ですね!
何だか充実した旅だったようで、続きが楽しみですよ~~(^^ゞ

ところで、わたしは残念ながらヤムナスカには用はないのですが、
サイトをポチして見て参りましたよ~(~o~)
今回の山歩きの日程は、全部そちらにお任せだったのですか?
ところで、ガイドではないけど・・・
わたしも今、ネットで見つけた旅行会社に頼もうかと思案中です。
初めてなもので内心、大丈夫かいな?と不安もあるのですが、
その地域専門なので、他所とは違う面白さがあるかな~と思い・・・

もしやして、バンフのホテルはあのお城!?
by collet (2011-08-07 14:08) 

葵ママ

いいですねぇ、わざわざ海を渡って山歩き。これぞバカンスって感じで。

私も山登りは苦手です。高校の開校記念日(5月3日)には毎年背振山登山というのがありましたが、これも訓練とばかりにでかい荷物を背負って足取り軽く先を行く登山部の連中を見た時は、「奴らは化け物だ!」と内心思ってました。
by 葵ママ (2011-08-07 21:57) 

ももんが

素敵なバカンスですね。
写真を見ただけで、なんだか癒されました。
続きを楽しみにしています。
by ももんが (2011-08-07 22:13) 

krause

カナダで休暇を過ごされるとは!素敵な時を過ごされたことと存じます^^。
by krause (2011-08-08 10:33) 

雀翁

colletさん、

ネットでカナダ、ハイキング、個人旅行...というような言葉で検索すると、当然のことながら、ズラズラでてきました。その中からヤムナスカを選んだのは偶然と言えば偶然なんですが、いくつかのサイトを見ると、自然とその会社の内容(本気度)が、見えてきたような気がしました。
日程およびハイィングコ-スの選定は、こちらの希望を聞いてもらって、最終的にヤムナスカにお願いしました、ただ中4日は、完全自由日ということにして、私たちだけでふらふらしました。

前にラオスに行った時、やはり、現地の旅行社にお願いして、6日ほど、べったりお世話になりました。日本語のしゃべれるガイドさんがついて下さり、面白い旅行になりました。


いえ、あのお城は街の郊外にあったこともあり、近づいていません。バンフのど真ん中(これもヤムナスカ推薦)の小さなホテルに泊まりました。

by 雀翁 (2011-08-08 12:27) 

雀翁

葵ママさん、

今回は、これまでにしたことのないような贅沢をしました。時間の使い方、お金の使い方を、山を歩くとだけに優先したのです。お陰で、帰国した今はピ-ピ-言ってますが、それだけの価値があったように思います。

私が山歩きに目覚めたのは、まだここ7年ほどのことです。山に縦に登るのはしんどいけれど、横に歩くのは楽しいということを、整備されたスイスの山が教えてくれました。今回カナダで、山岳ガイドの方々に、縦に登るのも、登り方(歩き方)次第では楽しいということを教えていただきました。(ただし、ばかでかい荷物がない場合に限る)。

by 雀翁 (2011-08-08 12:34) 

雀翁

ももんがさん、

ありがとうございます。
これまで、バカンスと言えば、ビ-チと思っていたのです(実際そうしてきました)。

「山に登ってリラックスする」という相反するように思える2つのことが実は同時にできることを、今回カナダで山岳ガイドの方に教えていただきました。私にとって大きな収穫となりました。

by 雀翁 (2011-08-08 12:38) 

雀翁

krauseさん、

海外と言えば主に会社の出張。空港-ホテル-会社という、魔の3角形から出ることがなかなかできません。今回のカナダは2回目ですが、前回はまさに、この魔の3角形内で過ごしました。

krauseさんは、出張の時でもしっかり楽しんでいらっしゃるようで、いつも素晴らしいなと思っています。

by 雀翁 (2011-08-08 12:42) 

Bonheur

いいなあカナダ。私の方にはまだ風が吹いてきません。
私も数ヶ月前から旅行の段取りを考えますが、今年はスイス旅行を計画しなくて本当に良かったと思います。(昨年同時期より25%以上のフラン高です) チロル旅行を予定して仕事のためにポシャりましたが、スイスの映像を見ていると、チロルに行っても「ああ、やっぱりスイスじゃなきゃ!」と、”元カレ”への未練を感じずにはおられなかっただろう、と思うにつけ、計画倒れも良かったのではないかと(半分"sour grapes"的な感情を否めないけれども)、感じるのであります。
ヘッドランプが必要なんですね!ワイルドな感じがしますね~。
私は今週半ばから、北国で涼んできます。太らないように気をつけないと。。
by Bonheur (2011-08-08 19:20) 

雀翁

Bonheurさん、

いいでしょ。
実際、私も「スイスの山へ」という感情が頭の隅にありましたが、カナダという語感のよさ(すべて「ア行」です)にど~んと背中を押され、今回の旅行を決行しました。ヘッドランプは実際購入せず、簡易懐中電灯を持って行きました(その使用目的が、夜間、ロッジの別棟にあるトイレへ行くためと説明されたため)。

今回の旅行ではめずらしく体重を減らして帰ってきました。お腹のお肉も心なしかどこかへ消え去ったように感じてます。2週間毎日10km以上のハイキングをした結果です(かなり早く戻るとは思いますが)。

どんどん新しい「カレ」を作ってください。

by 雀翁 (2011-08-09 08:36) 

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