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カナディアン・ロッキ-を歩く (その3) レイク・オハラに雪が降る [旅行]

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2日間、難波さんにお世話になったあと、次の2日はJamesというカナダ人のガイドに替った。Jamesは、この春まで日本の白馬で登山ガイド、スキ-ガイドをしていた変わり者(?)である。ちょっとアクセントはあるが、流暢な日本語を話す。長野オリンピックを見て日本に興味を持ち、Working Holidayを使って長野で英語の教師をしながら日本語を習得し、白馬のガイド(外国人担当)になったと言う。震災で外国人旅行者が激減したため、この夏秋だけカナダに戻り、冬にはまた白馬に戻るんだと話してくれた。カナダ人らしい、気さくでざっくばらんな青年だ。自分の顔を差しながら、日に焼けているように見えるが、そうではなく、2~3日前にバ-ベキュ-をしていて、その火で顔を焼き、軽いやけど状態なんだと言う。この上に日焼けを重ねると痛くなるからと、カナダの日焼け止めクリ-ムをべったり顔に塗った。塗りこんだのではなく、塗りつけただけだったので、彼の顔はクリ-ムの白がまんだら模様になり、そしてそれを気にしない、カナダ人の人間の大きさを示してくれた(単に雑なだけか?)。日焼け止めクリ-ムといえば、驚いたことに、日本から買ってきたものは白くならない。チュ-ブから出したときは白いのに、それを塗るとあっという間に白さが消え透明になる。タイのビ-チで顔を真っ白にしてパラソルの下で寝そべっていたのはそう遠いことではなかったと思うが、日本の会社の製品開発努力とその実力に脱帽である。さらに言えば、ロッキ-では水辺に行くとけっこう蚊が多い。携帯必要品リストにも「虫除け」と記されていた。初日、トンネル山で蚊が気になったので、早速、虫除けスプレ-を使い、難波さんにも「使いますか?」と勧めた。すると、「それは日本製ですか?」と返事があり、「そうだ」というと、安心して使いながら、「カナダ製のはきつくて肌をいためることがあるんです」。これと同じことを後にお世話になった小泉さんも言っていた。日本人とカナダ人の肌の性質が多少違うということはあるだろうが、日本製のものは細かく消費者のニ-ズをカバ-している。「これが日本の生き残る道ですね」、小泉さんと激しく同意した。

カナディアン・ロッキの旅行サイトを見て、最も頻繁に登場するのはたぶんLake Morain(モレ-ン湖)の写真だろう。氷河湖独特の青い水をたたえ10Peaksという10の山の頂に囲まれた、大変「絵になる」湖である。朝出遅れると、駐車場が満杯で長い距離を歩く破目になる。曇りがちのこの日、湖面の光沢は今いちだったが、感動的なモレ-ン湖の姿を見ることができた。予定では、このモレ-ン湖の横から出ているトレイルに沿って、ラ-チ・バレイ(カラマツ谷)に行くはずだった。しかし、トレイルのの入り口にBear Warning(熊警告)の看板が出ており、4人以上で行動することが強く勧められていた。熊警告は、国立公園のレンジャ-やハイカ-の情報をもとに、熊の動きを予測して出され、時には立ち入り禁止になることもある。「熊が使っている山に人間がお邪魔するのであるから、熊の行動を制限するようなことは人間はしてはいけない」というのが基本的スタンスである。この日ラ-チ・バレイに出された警告は推奨であったが、Jamesは「ガイドも、行かないことを勧めます」と言い、山で熊に会いたいという願望を全く持たない私は強く賛同した。

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代替案として、Lake Louiseの駐車場から出ている、Saddle Back Pass(馬の背峠)へ登ることになった。松の種類を教えてもらったり、地衣というコケの仲間の話を聞きながら、難波さんのときと同じように、ゆっくりとした、しかし確かなペ-スで峠へ登った。ガイドと歩くと、その行程が安全で楽になる(ペ-スを取ってくれ、また適切に休息や給水を入れてくれる、熊に会わないように注意を払ってくれる)だけでなく、山やそこに存在する動植物の話をたくさん聞くことができる。彼らは驚くべき大量の知識を持っており、それを少しずつ分けてもらいながら一緒に歩くのは、とても楽しい。昼食(持参のサンドイッチ)後、雨が降り出した。そのあと頻繁に使うようになった、Gore-Tex(ゴアテックス)の雨合羽を着込み、帽子もゴアテックスの雨除け帽に変える。靴もゴアテックス入りだから、文字通り頭の上から足の先まで防水のゴアテックスに包まれる。雨合羽は防寒対策にもなる。雨の中のハイキングなど、予想もしていなかったし、歓迎もしなかったが、こうやってきちんとした装備で歩いていると、不思議なことに雨がほとんど気にならなくなる。帽子をたたく雨音が楽しいくらいだ。こうして、ほとんど疲れをかんじないまま、トレイル口から標高差で約500m登った峠に着いた。残念ながら眺望はきかなかったが、ある種の達成感があった。雨の中を歩いたこともそうだし、自分で設定した500mをいともたやすくクリア-してしまったことも大きい。もしガイドのJamesがいなければ、この峠は登らなかっただろうし、もし登ったとしても雨が降った時点で引き返したか、引き返さなくても峠に着いたときは青息吐息で、標高500mの限界設定を400mに変更していただるう。改めて、ガイドの力を認識した。

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翌日は、カナデキアン・ロッキ-の聖地とも言われるLake O’Hara(オハラ湖であって小原湖ではない)だ。聖地と言われる由縁は、もちろんその美しさにもあるが、規制によって、日に2本のバスしか入らないという物理的な行く事の難しさにある。事前のヤムナスカとのメ-ルの交換で、Lake O’Haraに行きたいという希望を伝えておいたが、「バスの予約が取れる保証はない」と言われていた。前日にしかオ-プンにならない商業用(ツア-など)の座席の予約に、ヤムナスカの職員10人ほどが朝一斉に予約の電話をするのだそうだ。そして、私たちは運良くその予約ができた。約束の10時にバスが出る駐車場でJamesと合流する、彼はこの日も半パンだった。小雨模様だったので、私たちはすでに雨合羽を着用し、寒さ対策としてその下にはフリ-スまで着込んでいた。バスで約30分、Lake O’haraの畔近くに乗りつける。バスには、元気そうな日本人のおば様方6人ほども乗っていた。「友達のお母さんのグル-プなんです(大変なんです)」、そのグル-プをガイドしているお姉さんが困ったような顔で言った。近寄りがたいLake O’Haraだが、キャンプ場とロッジもある。そのロッジの前からトレイルが始まる。Lake O’Haraを左手にそしてLake Marieを右手にトレイルを進む。スイッチ・バック(山面をぎざぎざに登ること)を繰り返し、高度を上げていく。相変わらず、Jamesはとてもゆっくりしたペースで歩いてくれるので、無理なくついていける。一段落して、上の方からLake O’Haraの美しさにため息をついていると、妻が「あの白いのは何かな?」とJamesに聞いた。「ああ、あれは...あれは、Mountain Goat山ヤギだよ。うわぁ、あんなにたくさん、初めて見た、すごい!」。Jamesが興奮している。1匹2匹の山ヤギなら見たことはあるが、10匹ほどの集団は初めてだと言う。山がすとんと落ちて棚のようになった小さな草地で、10匹ほどの真っ白な毛に包まれたMountain Goatたちが草を食べていた。よく見ると、その近くで2匹のMarmot(マ-モット、ちょっと狸に似た大型のねずみのような動物)がもつれ合って遊んでいた。スイスのツェルマットからゴルナグラッドへの登山鉄道のチケット売り場で売り付けられた望遠鏡を持参していたので、じっくり観察する。どうやらヤギは親族グル-プのようで小さな子供が2匹いた。その後、Lake O’haraを一望できる岩の上に出て昼食。「その岩から先の岩はダメです」、Jamesが言う。崩れ落ちる危険があるそうだ。「そんなものか」と思ったが、後で、下の方からその高台を見上げると、岩に亀裂があり、今にも落ちそうな姿が見えた。昼食時は上がっていた雨が、歩き出した途端に降ってきた。雨の中を歩くのにはもう慣れてしまった...が、やがてその雨があられになり、そしてとうとう雪になった。しかも吹雪状態だ。この日は7月20日。夏の北半球にいるというのに、こんな雪に合うとは思いもしなかった。Jamesもたまらず、「ちょっと待って。Rain Pants穿きたい」と半パンの上に防水の長パンを穿いた。Lake Opabin(オペビン湖)手前で雪渓を渡り、氷河の迫ったオペビン湖を望む(その間、ずっと雪が降っていた)。ここが当日の予定折り返し点、寒いし視界も利かないので、早々に下山することに。ふと、Jamesが立ち止まり、トレイル上にあった泥の塊のようなものを突っつき出した。「これ、何かわかる? そう、熊の糞。けっこう新しい」。吹雪の中で熊に会うなんて真っ平だ。幸い熊には会わなかったし、下り後半には雪も雨も止んだ。出発点に戻ったとき、「やったね!」、Jamesがハイタッチをしてきた。Lake O’Haraの美しさ、360度の山々の姿、そして吹雪のLake Opebin...ずっと忘れないと思う。

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Bonheur

美しさにため息が漏れますねぇ。雨のしずくを跳ね返す緑から発せられる良い香りが、こちらにも届いてくるような気がします。
マーモットがカワイイ!白いヤギのお写真はどれですか?
雀翁さんご夫婦、足腰が丈夫でいらっしゃるのですね。私もいつまでも健脚でいられるように、トレーニングしなくちゃ、と思っております。
5年ぶりに訪れた北海道、景色も素晴らしいですが、食べ物が全て美味しすぎて、また、出会う方々が親切で、生き返りました。「食べることは生きることだ」と大げさながら思いました。寒いシーズンを除いて、また近々訪れることになりそうです。
by Bonheur (2011-08-17 19:40) 

krause

山の景色も、高山植物も、そしてそこに住む動物たちも絵になりますね^^。こんな素晴らしい景色の中で、数日ゆっくりと過ごしたい!と思いました。今朝のソウルは雨も上がり、晴れているようですね。これから忠南へ行ってまいります、
by krause (2011-08-18 06:27) 

雀翁

Bonheurさん、

雨が降ると緑が映えます。草木が喜んでいる声が聞こえてきそうです。
Mountain White Goatの写真は何枚かあるのですが、私の持ち歩いているデジカメで撮った写真では、ここに掲載しても、白い点くらいにしか見えないので涙を飲んで掲載を断念しました。いっしょに行ったガイドのJamesも「もっといいカメラが欲しいよ」と言いながら、彼のデジカメで撮っていました。
Canadaに行く前の約3ヶ月、週末はできるだけソウルの近所の山で歩くようにしていました。通勤も往復徒歩(今でも)です。自分の足で歩けるということはほんとうに幸せなことだと思います。
「食べること、飲むこと、歩くこと、読むこと」が人生です(私の場合)。北海道は、いいですね。おっしゃるようにどこに行ってもおいしいものがたくさんあります。また、同じものでも、ビル街の地下のレストランで食べるのとは、全く違った味になるのかも知れません。

by 雀翁 (2011-08-18 08:38) 

雀翁

krauseさん、

ロッキ-に入って2~3日すると、自分が全く別の世界にいるように感じだしました。

こちらでは、ずいぶん久しぶりに太陽を見た気がします。この夏は異常に日照時間が少なく、雨がどっさり降りました。これから中秋に向かって、果物の需要がどんと増えるのに、不作で値段が跳ね上がって庶民は困っているようです。

by 雀翁 (2011-08-18 08:43) 

collet

雨の中のトレッキング、わたしも嫌いじゃないです。
というのも、緑が特別に鮮やかになりますでしょ!
あれがね、何ともイイんですよね~~(^_-)-☆

ところで、わたしもよくジャングル紛いの所へ出掛けるもので、
そんな時には必ず、日焼け止めや虫除けが必要になりますが、
それらの類を現地調達したことはありません。
あっ、蚊取り線香も金鳥のを持参するほどでして~(^^ゞ
やはり肌は、日本人の方があちらの方より敏感なんじゃないですか?
あちらの方は、虫さされにも強いようですし!?

それにしても、美しいですね~~
景色は勿論だけど、お花も~~!(^^)!
by collet (2011-08-18 14:14) 

雀翁

colletさん、

ジャングル紛い...オランウ-タンに会いに行ったり...ですね。

今回は雨の日がけっこう多かったので、結局日焼け止めはそんなに要らなかったのですが...Canadaの日焼け止めを塗ったJamesの鼻の頭が半分真っ白になり、しかもそれを彼が全く気にしていなかったので、逆にこちらが、そんなことが気になる「小さな人間」のように思えてしまいました。でも、今さらながら、「日本製、Made in Japan」の質の高さには驚くばかりです。関係ありませんが、韓国の風邪薬はよく効きます。何か危ないものが入っているのでは?と疑うほどです。

山に咲く高山植物にはほんとうに魅せられました。アレを見たあと、花壇に整然と並んだきれいな花に「?」と感じてしまいました。

by 雀翁 (2011-08-18 18:30) 

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