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山の道ですれちがうと [韓国の山]

文化、価値観、対人距離感などは、国や地域によってかなり異なる。それらは、通常、単に違うのであって、良い悪いではない。でも、それらに慣れていないと、「何で?」と思うことがある。日本人のそれに比べ、韓国人の「対人距離感」はかなり近い方だと思う。空港などで並んでいても、後ろの人が当たるまで近づいてくることがよくある。「あんたの年はいくつだ。仕事は何だ。あんたの奥さんは日頃何してる...」、けっこう個人的な質問も多い。一方、韓国人からすると、日本人は他人行儀で冷たいと映ると聞く。韓国人は非常に親切で礼儀(年功序列)を重んじる。お互いに道を聞くのにもまったく躊躇がなく、車の窓を開けて大声で呼びかけてきたりする。私もしょっちゅう道を聞かれる(8割方は答えられない、何を聞かれているかわからない)。彼らは、知り合いに会うと、丁寧に挨拶する。持っている食べ物は基本的にみんなで分け合う。

ハイキングをしていると、当然だが細い道を歩くこともある。ハイカ-の絶対数が多い韓国では、たくさんの人と行き交う。人一人がようやく歩ける細い道。譲りあわなければすれ違えない(と思える)道。韓国の山では、95%私が譲る(道をよけて深い草むらや岩の上に立ち。向うから来た人をやり過ごす)。道を譲られた95%の人のうち、何か反応するのは10%ほどで、あとはさっさと通り過ぎていく。知っている人と会うとあれほどしっかり挨拶をするのに(しかも大声で)、そしてお互いに遠慮を示すのに、山の中で会った見知らぬ人には、日本人的感覚ではどう考えても、「ありがとう」と道を譲ってもらったあいさつをするところを、無言で通り過ぎていく。何だか不思議だ。何も道を譲ってもらいたいわけでも、礼を言ってもらいたいわけでもない。ただ、不思議なのだ。「ありがとう」の一言がきっとハイキングをもっと楽しくするだろうにと思うのは、やはり価値観が違うのであろう。韓国人同士が街ですれ違う場合も、ほとんど譲り合わない。まるでチキンレ-スのように、ぶつかる直前までお互いをよけない。実際、肩と肩がぶつかることはよくあり、そして当然誰も謝らない。この国には、肩が触れたと「いちゃもん」をつけるチンピラ(例: あいたたたぁ、あ~、肩の骨が折れたやんけ、どないしてくれんねん、医者代出してんかなど)がいないのだろうか。この理由を私なりに分析すると次のような可能性が見えてくる。

• 譲り合う必要を感じない、ゆえに、礼を言ういわれはない。つまり、すれ違えなさそうな道というのは単に私の評価であって、韓国人的には身体をぶつけ合いながらでも、すれ違うことが出来る。よって、道を譲ること自体ナンセンス。
• 世の中、お互い持ちつ持たれつで成り立っており、いちいち礼を言うなど、水臭いことこの上ない。
• 知っている人には礼を尽くすが、見知らぬ人にはその必要はない。

たぶん、これらの要素が入り混じってのことだと想像する。繰り返しになるが、これらは違いであり、良い悪いではない(あまり言うと、良い悪いを言っているように聞こえるがそれは錯覚だ)。

地下鉄でも、乗車口を広く開けて待たず、降りる人を押しのけて乗り込む人も多い。小学生のとき、電車の乗り降りの仕方を教え込まれた(道徳の時間?)私の世代には、とても不思議な光景だ。一方、年寄りや赤ちゃんを抱いた人には必ず席を譲る。若者や健常者(と見える人たち)が大きな顔で優先座席を占領している国とは違う。何がどうなっているのか、モラルのポイントが違うのである。ただ、山には山のル-ルがある。細い道で譲り合わないと、最悪、命にかかわる危険が出てくる。私は崖から落ちるより、余裕を持って事前に止まり、向うから来る人を先に通す方を選ぶ。でもそれは人のためにそうするのではなく、その方が自分にとって心地良いからである。

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ももんが

北京オリンピック前に中国では、バスの乗り方のマナーの練習をしているとニュースで言っていたのを思い出しました。韓国は中国ほどではないのでしょうが、やはり陸つながりで似ているところもあるんですね。

私も雀翁さんのようにいたいと思います。特に運転中は気を付けないと^_^;
by ももんが (2011-10-27 12:13) 

krause

以前に比べると、韓国の自動車マナーもかなり良くなってきていると思います。また、知らない人同士が、気軽に話しができる韓国を羨ましく思っています。随分昔ですが、一人でバスに乗っていたら、前に立っている若い女性が、私の膝に鞄を置きまして「韓国では、こういう習慣があるんですよ。」と言いました。一人でいてもも寂しくない社会、に心地よさを感じました。

しかし、「皆が快適に過ごすためのマナー」について、韓国はこれからも変化していくのかもしれませんね。
by krause (2011-10-28 13:09) 

collet

国によって、いろんなマナーの違いがあるのは仕方ないでしょうが、
ハイキングでもありましたか・・・
あっ、そんな時は年功序列は関係ないのですか?

ところで、少し前の「ふしぎ発見」というTV番組で、
韓国の風水が取り上げられ、
リポーター自らもハイキングに挑戦していましたが、
本当に恐ろしいほどに急勾配の岩山で驚きました!
まあ、あれじゃ悠長に挨拶なんかしてられないかも~~(^^ゞ

でも、やはり挨拶は大事ですね!
同じ山を共有してる者同士ですものね~(*^^)v
by collet (2011-10-28 15:21) 

Michikusa

日本では、山道ですれ違う人には必ず挨拶をしますけど、あれは誰が始めたんでしょうね?子供の頃からそうだったから、今でも当たり前のようにやるし、出会った人たちもまた、必ず声をかけてくれます。秋吉台でもそうだったなぁ・・・。
市街地ではそんなことないから、挨拶をしなくなるラインはどこだろう?・・・なんて、くだらないことを考えます。
うちの近所を歩いていると、下校途中の中学生が挨拶をしてくれます。知らない子たちなんですけどね・・・。あれは気持ちいいな~。^^v犬の散歩でも、お互いにしますね。あれは仲間意識かな?
by Michikusa (2011-10-28 23:40) 

雀翁

ももんがさん、


マナ-を云々するつもりはありませんが、お互いが気持ちよく生活する方法を(それをマナ-というのでしょうね)共通の価値観の元にシェアできればいいなと思います。
昔のソウルで、タクシ-乗り場で並んでいて、いつまでたってもタクシ-に乗れないことがありました。並んでいるのに一歩前に出た者勝ちで、次々と割り込んでいくのです。そこのル-ルは並んだ順ではなく、声を出した者、前に出た者順のようでした。いつまでも乗れない私を可哀相に思ったのか、見知らぬ人が助けてくれました。

私も見知らぬ人を助けられる人になりたいと思っていますが、道は遠いようです。


by 雀翁 (2011-11-03 08:33) 

drumusuko

なるほど、確かに国民性はいろいろあるのかも知れませんね。
あいさつや、奥ゆかしさ、義理、人情、日本人でよかったと思います。
by drumusuko (2011-11-03 17:16) 

雀翁

krauseさん、

1980年代の終わりごろに比べれば、ソウルでの運転は格段にしやすくなっています。運転者一人一人の運転態度の向上とインフラの整備がその主な理由だと思います。

10数年前、バスに乗っていると誰かが私の鞄を奪おうとしました。でも実際それ名、座っている人が私の鞄を持ってくれようとしたのです。その助け合いの精神に大きな感銘を受けたことを思い出します。

by 雀翁 (2011-11-04 12:22) 

雀翁

colletさん、

山の中での年功序列は、あきらかな「おじいさん」「おばあさん」に接した場合は有効だと思います。

韓国の山は、高さはそんなにありませんが、険しさと言う点では、けっこうきついところも多いようです。私が、南漢山城という容易な山に通うのは、きつい山を避けているからです。きつさもさることながら、登山人口が多いので、険しい細い道では簡単に渋滞が起こり、山に来てまでイライラさせられるのです。

西洋人はどんな小さなことにも、「Thank you」を欠かしません。それは文化の違いでしょうから、そうしなければならないとは思いませんが、ただ、「Thank you」を言ったり言われたりするのは、少なくとも私にとって、とても快適なのです。

by 雀翁 (2011-11-04 12:31) 

雀翁

Michikusaさん、

子供のころ、どうして街では挨拶しないのに、山ではみんな挨拶するんだろうと、不思議に思ったことをがありました。満員電車で会う人みんなに挨拶することは実際的ではないし、もしそうしたら、うるさくて仕方がないだろうなと思います。会社でも、近所の顔見知りにも挨拶するので、どこかに境界線があるのでしょうね。探偵ナイトスク-プに訊いてみたいところです。挨拶する子供は、それだけで数倍賢く見えます。

by 雀翁 (2011-11-04 12:36) 

雀翁

drumusukoさん、

私も、海外在住の期間の長さに比例して日本が好きになっています。良い悪いではなく、それが一番しっくりくるんです。

by 雀翁 (2011-11-04 12:39) 

mee

お久しぶりです♪
里帰りから帰ってきて10日くらいが過ぎましたが、未だ日本の余韻が。。。
やっぱいいです♪特に食べ物には癒されますね♪
by mee (2011-11-04 18:16) 

COLE

まったく同じ考え方です

仕事柄飛行機によく乗るのですが
不思議なことに最近気が付きました

フライトアテンダントは最高の微笑で乗客をもてなしてくれる
でも乗客はブスッとしている
乗るときにも降りるときにも、コーヒーをもらうときにも
ありがとうございました、またの御搭乗をと声をかけられても

たくさんのことに気づかされます
by COLE (2011-11-05 17:14) 

雀翁

meeさん、

Phuketの方は水害と無縁だと信じています。バンコクの友人からの情報で、日に日に切迫感が高まっています。

日本はいいですね。

by 雀翁 (2011-11-07 12:48) 

雀翁

COLEさん、

そうですね。
残念ながら、お金を出しているから当たり前...という非情に短絡的で狭いなとらえ方をする人が増えてきたように思います。客である以前に社会の一員であるということを忘れてしまうのでしょうか。価格に見合ったプロフェッショナルなサ-ビスを求めるのは悪いことだとは思いませんが、サ-ビスはしてもらって当たり前ではなく、やはり「ありがとう」という気持ちで応えることで生きていることが楽しくなるように感じます。

by 雀翁 (2011-11-07 12:53) 

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