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友遠方より 来る 2011 秋 (1) [友だち]

10月末から11月中旬にかけて、日本から3組のお客さんがあった。海外に住んでいると、懐かしい顔と共に、いろんな話題や情報を届けてくれるお客さんは大歓迎である。

Sさんは、妻のマンドリン友達。タイ在住時代、いっしょにマンドリンを弾いた仲だ。お母上様の世話があるため、今もタイと日本を往復されている。今でもタイに行くときは、たいていSさんに会う。家族全員がそれぞれお世話になっている。10月、妻の所属するソウルのマンドリン・グル-プの定期演奏会があり、Sさんはそれを見にくることになった。演奏会当日、妻は朝から舞台リハ-サルで出かけていたので、私が空港への出迎えを仰せつかった。かつて(終戦前)、Sさんのお母上様は、韓国南部の町で暮らしていたことがあり、25年ほど前にSさんはお母上様と一緒にその町を訪れたことがあるそうだ。お母上様が卒業された女子高(当時は日本人運営)がまだ残っていて、おとないを入れると中に案内され、在校生に囲まれて写真を撮ったそうである。日本人が来てもいやな顔などせず、「先輩!」と明るい声をかけられたとか。その後、韓国は飛躍的発展を遂げたので、今のソウルに25年前の韓国の姿を見ることはできない。空港を出てヨイドに近づき、高層のアパ-ト群を目にして、Sさんは感嘆の声を上げた。それは、4年前、私が18年ぶりにソウルへ戻った時と同じである。「Seeing is Believing」、実際にソウルの街を見た人は、その発展振りを実感する。日本の後ろを歩いている国ではない、横に並び、今、あっという間に抜き去っていこうかという国なのだ。戦前、韓国に住んでいた日本人は、一般的に日本がこの国にしたことに関し、少なくとも部分的に肯定的である。秩序を構築した、公平な教育制度を拡充した...Sさんもお母上様からのインプットがあるのであろう、日本人はいい事「も」したと言う。わざわざ足を運んでくださったお客さんに対し論戦を張るつもりはないので、「そうですね」と聞いた。でも、私は、「いい事」と言う前に、「よくない事」もたくさんしたということを理解し認識するべきだと思っている。

演奏会に行く前に、家の近くのフ-ド・コ-トで軽食を食べた。Sさんは辛くないものをと、カルグクス(韓国風うどんもどき)を注文する。タイ料理にはめっぽう強いSさんである。タイ料理もけっこう辛いものが多いが、韓国料理とは辛さのジャンルが違う。強いて言えば、タイ料理はク-ルな辛さ、韓国料理はホットな辛さだろうか。Sさんは根が大変真面目なので、お盆に載ってきたものをすべて食べようと奮戦していた。「全部食べなくてもいいんですよ。キムチなんかは残すのが普通ですから」と言ったが、人間、信じる価値観に背くのは難しい。もったいない、食べ物は粗末にしない、出されたものは残さずに食べる、日本人の持つ美しい価値観だと思う。しかし、韓国でそれを実践するのは簡単ではない。特にSさんはキムチ系が得意ではないのだ。私は汗を流して食べるSさんを見て感動した。「世界には十分な食べ物が手に入らない人が何億といるのに、大量に副菜を残す韓国の習慣はおかしい」、当初そう思っていたのに、いつの間にか韓国生活に慣れた私は、当然のように副菜を残している。反省しきりである(それでも全部食べようとは思わないが)。

妻のマンドリン・グル-プの演奏会は、何と言うか、ちょっと残念だった。最初にソウルのグル-プが演奏し、次に日本からのゲスト・グル-プが演奏、最期に2つのグル-プがいっしょに合同演奏というプログラムだ。この2つのグル-プの実力の差が、私のような素人目にも歴然としていた。ソウルのグル-プの創始者は、「みんなで音楽を楽しもう、無理して難しい曲をやったり、高い技術を身につけなくてもいい」という理念を持っていた。この理念の下に集まったのは、子育ても一段落し(というか、子育てはすっかり終わって)、経済的にも余裕のあるリッチ・アジュンマたちである。驚いたことに、わが妻でも若い方だという。一方、日本から来たグル-プは、「学生時代からガチでやってます」というような人たちの集まりで、年齢的にも、もしわが妻が入れば、平均年齢を押し上げること必至である。演奏を隣の席で聴いていたSさんも、日本のグル-プの演奏に感嘆のため息をもらしていた。演奏が終わって、ホ-ルを出ると、我が家に時々妻の指導に来てくださるPさんに会った。「すごかったですね。日本人の演奏を聞いたら、始めの韓国人の演奏は吹っ飛んじゃいました」、などと言う。Pさんは韓国人で、前にこの韓国のグル-プの指導にも携わった人である。自分が指導したグル-プに責任を持ってもらいたいものだ。

それから2晩、我が家では深夜を過ぎても、Sさんと妻の話し声が途切れることはなかった。Sさんにもらったお土産の黒糖菓子は、すごくおいしかった。

写真は2人で行ったという韓国伝統茶屋。

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ももんが

我が家では、私の友人・親せきが夫ともども楽しく過ごすということがほとんどないので(皆無に近いです)、とてもうらやましく思いました。
そういえば、結婚して私は極端に昔からの友人や親せきとの付き合いが減ってしまいました。とても残念なことです・・・。
あ、楽しい記事にさみしいコメントになってしまいました。ごめんなさい。
by ももんが (2011-11-28 21:03) 

krause

本当の昨日のソウルは暖かかったですね、驚きました。

「友、遠方より来る」、本当に楽しいことです。私も、昨夜は数年ぶりに知人に会いました。そして、都内では頻繁に会っているのですが、ソウルで合流するのは10年ぶりの韓国人の友人にも会いました。楽しかったです。
by krause (2011-11-29 06:51) 

雀翁

ももんがさん、

日本にいると一人一人が自由に動けるので、家族ぐるみでというのはあまりないのかもしれません。海外に長くいると、自然と家族内での情報や友人の共有が進むようです。積極的にそうしなくても自然とそうなるを得ません(生きていくために)。
日本の友人たちとは、すごく疎遠になり、限られた人たちと年に一度会えるか会えないかという感じです。
将来的に、日本に戻った時が怖いです。

by 雀翁 (2011-11-29 08:43) 

雀翁

krauseさん、

あと数日暖かい日が続きそうです(雨模様ですが)。今朝は、通勤で歩いていて、あまりに暖かいので上着を取りました。
思わぬ所での、旧友との再会、うれしいですね。また、お酒の席に花が咲くことでしょう。

by 雀翁 (2011-11-29 08:48) 

collet

千客万来だったようですね~♪
それにしても、嬉しいことですね。
沢山の方達が寄ってくださるということは!
それはたとえ、ショーバイではなくてもね~(^^ゞ

ところで、「ク-ルな辛さとホットな辛さ」
サスガ雀翁さん!ウマいこと言いますね~~
正しくその通りだと思います!
ただ、苦いのはOKだけど・・・
辛いのが苦手なわたしはどちらも得意じゃないけど~(>_<)
by collet (2011-11-30 13:42) 

雀翁

colletさん、

人が来てくれるというのは、ほんとうにありがたいことだと思います。

「辛いな」と思いながら食べていると、ある時、その辛さの向うにとてつもないおいしさを発見するのが韓国料理の醍醐味だと思います。おいしさが発見できずに、ヒ-ヒ-言うだけの時もありますが...レストランなどでは、「ちょっとだけ辛くしてね」と頼みます。
韓国人に、「おまえさんらは辛いと感じないのか」と聞くと、「辛いに決まってる、でもそれがおいしい」と返されます。

by 雀翁 (2011-11-30 18:56) 

Michikusa

韓定食は残すのが礼儀・・と習いました。
取り皿に取らずに直箸で直接口に持っていくのが正しい・・と習いました。
正式には立て膝で座るのが礼儀・・というのも習いました。
郷に入っては郷に従え、ですね。
でも、残した料理が捨てられのは見たくありません。
by Michikusa (2011-12-07 09:40) 

雀翁

Michikusaさん、

所変われば品変わる、いろんな「礼儀」があるようですね。韓定食は残さなければならないとは知りませんでした。誰かの家に呼ばれた時には、残すのがマナ-のようですが。

でも、道徳的に考えて、食べ物は残さない方がいいように感じてしまいます。

by 雀翁 (2011-12-07 17:52) 

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